生活習慣病へ光

横浜市大医学部の研究チームは内臓脂肪型肥満に対する漢方薬の改善効果を科学的に解明することに成功した。食欲増進ホルモンを低下させるメカニズムを世界で始めて発見、日本高血圧学会総会で発表した。

肥満症はメタボリック症候群を経てさまざまな生活習慣病の原因になるが、治療は食事、運動療法による減量が中心で成功例が少ないのが現実。一方、漢方薬は日常診療で広く使用されているが、効能のメカニズムは大部分が不明。今回の研究成果によって、西洋医学の知見と組み合わせた統合医療が前進しそうだ。

発見したのは田村功一准教授ら循環器・腎臓内科学の研究グループ。肥満症、動悸、肩凝りなど高血圧の随伴症状に効能・効果があり、医師が処方した場合には保険が適用される漢方薬「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」を対象に、厚生労働省の助成研究として2010年度から12年度まで効能・効果のメカニズム解明に取り組んできた。

研究グループは、内臓脂肪型肥満、高血圧などの生活習慣病を発症させたマウスに防風通聖散を投与。体重、餌を食べる量、血圧、脂肪組織、糖資質代謝に対する治療効果を検証した。

試験観察では、脂肪を燃焼させる基礎代謝を担う褐色細胞が活性化した一方、皮下脂肪などの白色脂肪細胞の小型化が促進されることが分かった。血液検査では、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の低下、脂肪細胞から分泌される抗動脈硬化ホルモンの上昇も認められた。餌の摂取量が減少したことから、食欲抑制のメカニズムを解析したところ、食欲増進ホルモンのグレリンの血中濃度低下を確認。体重や食事量の増加、血圧上昇が継続して抑えられた。

漢方薬は日常的な診療でさまざまな疾患に対して処方されており、厚労省が設置した「『統合医療』のあり方に関する検討会」は「食生活やストレスなど複合要因によって起こりうる疾患については、近代西洋医学だけでなく漢方、健康食品など各種の民間療法が広く患者、国民に利用されている実感がある」との認識を示している。

田村准教授は「肥満症は、薬品や手術による治療法もあるが、副作用などから適用はごく一部の重症患者に限られている。処方されることが多い漢方薬の作用メカニズムの一端が解明されたことで、西洋医学との併用によって効果的な治療につながる」としている。