入浴で睡眠誘発
以前、千数百人の大阪府民に、疲れに対する日常的な対処法を聞いたところ、
「効果的な回復法」として一番多く挙げられたのが入浴でした。
入浴すると温熱効果で血管が拡張して全身の血液の流れがよくなり、酸素や
栄養素の供給が増えます。また、水圧によるマッサージ効果や水中の浮力
により、普段は体重によって圧迫されているひざや腰の負担が軽減すること
も疲労の回復につながります。
入浴の効果は湯の温度によっても変わります。42度ぐらいの高温浴は、交感
神経系の活動を高め、新陳代謝を促進するので、抑うつ状態の改善や意欲の
向上などの効果が期待できます。
一方、39度以下の比較的ぬるめの温度だと、副交感神経系の活動が高まり、
リラックスや睡眠誘発の効果があります。ぬるめのお湯にゆったり漬かると、
体の深部体温が38度程度まで上昇し、入浴後、体温が下がり始めるとともに
眠気が誘発されるという仕組みです。
不眠で困っている患者さんには、この体温低下に伴う眠気を上手に利用する
事を勧めているのですが、入浴後30分以上経過すると、上昇していた深部
体温は元に戻り、入眠誘発効果は失われてしまうのでご注意を。
この効果を上手く活用するためには入浴後にすぐに寝付くことが大切です。
最近は、浴槽に泡や水流を作り出す装置もあります。泡風呂には交感神経
系の過度な緊張をほぐす効果があり、また、暖かい湯の流れに体を当てると、
筋肉の緊張が取れ、脳機能の回復が認められることも分かってきています。
入浴は、科学的効果が明らかになっている疲労回復法のうち、一番身近な
方法のひとつ。自分にあった入浴法を取り入れてみてください。
関西福祉科学大教授・倉恒 弘彦
神奈川新聞 健康欄より