未来医療への懸け橋
横浜市立大学の岩井俊憲助教は「患者に優しい歯・口・顎の外科手術」の実現へ向けて、専門の内視鏡や身体的な負担を軽減させた低侵襲手術の開発に取り組んでいる。
岩井助教は「現在、低侵襲な腹腔鏡手術は多くの病院で行われ、患者の『生活の質』は大きく向上した。しかしこれまでの歯科・口腔外科手術では内視鏡はほとんど導入されていなかった」と説明する。
岩井助教の専門は内視鏡を用いた低侵襲手術で、これまでに多くの歯科・口腔外科手術を開発してきた。岩井助教の元には、唾液が出にくくなる唾石症の低侵襲手術を希望する患者が全国から多数受診。「小さな唾石であれば、細い内視鏡を唾液の出口から入れて内視鏡下に摘出できる。顎下腺ごと唾石を摘出する手術では、5cmから6cmの切開で1週間から10日程度の入院が必要。内視鏡を使用することで2cmの切開で2泊3日の入院が可能になる」という。
歯科・口腔外科における内視鏡手術の普及を阻む要因として▽内視鏡システム自体が高価▽内視鏡手術の技量向上のためのトレーニングシステムが未開発ーの2点が挙げられる。
このため、岩井助教は「ノートパソコンに接続できる安価な内視鏡システムの開発」や「トレーニングシステムとしてのバーチャルシュミレーターの開発」を推進。「患者に優しい歯科・口腔外科の内視鏡手術」が普及するように、早期の実用化を目指している。